立身出世を夢見て、一介の染屋職人の伜から、侍になる野望を抱き江戸へ出奔した由井正雪は、その明晰な頭脳を武器に島原の乱で浪人たちの衆望を集める。浪人隊を結成し、幕府軍の先鋒に使うことを進言する。しかし知恵伊豆・老中松平信綱の狡猾な罠が待っていた……。支配権力への抑えがたい怒りを胸に、徳川のゆるぎない天下に挑んだ巨人を正面から見つめた本格歴史長編。
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自分の勘に頼ってはならない、理論や他人の説に頼ってもならない、自分の経験にも頼るな、大切なのは現実を見ることだ。自分の目で、感覚でそこにあるものを観、そこにあるものを掴むのだ、正雪はある老人から学んだ。
本書は徳川幕府開府後の間もない頃、まだ巷には西軍の残党や、幕府の基盤を強固にするため大大名の改易などにより浪人となった者が溢れていた頃である。
浪人者は今日食べるものにも事欠く暮らしで困窮していた。そんなもの達の暮らしを立てようと由井正雪は立ち上がった。といっても、謀反を企てるのではなく、幕府の内側から変わってもらおうと、浪人者を変な騒動に巻き込ませないように、苦辛しながら言葉で世の中を変えていこうとした。
そんな正雪を幕府がそのままにしておくはずはない。なんとか罪を着せて葬ろうとする。それでも正雪は正攻法をとり、決して逆上しなかった。
結局は、幕府に無実の罪を着せられてしまうが、本当に正雪は謀反を起こそうとしたのか、それは分からない。ただ、それまでの正雪の生き方を鑑みると最期まで、信念を貫き通したことだろう。このような小説をきちんと残していくことが、後に残されたもの、小説家の使命なのかな。ありがとう周五郎さん。
全二巻
由井正雪。一介の染屋職人の倅から始まる。書物、勉強が好きで、広く修行して、なにごとにも怖れないちからをやしない、一人諸国をさすらう。
志をもち、堂々と歩みを進めていく姿に驚きました。引き込まれますね。
由井正雪。通説で言われる人物像を切り崩す。圧倒的な筆致力と深みのある内容。前半は島原の乱までの浪士との触れ合いを描く。周五郎の時代歴史小説はやはり群を抜くな〜。
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