「小説家の「幸福」」をめぐる考察、デイジーの刺?をしたブラウス、岡上淑子によるフォト・コラージュ作品、謎めいた宿命の女、胡同(フートン)に咲き乱れるジャスミンの香り、金粉ショーのダンサーとの狂乱の恋、そして「塊」と「魂」。無数の映像や小説、夢や記憶の断片が繊細に絡み合い紡がれ、ここに前代未聞の物語が誕生した!
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スタンダールが化けて出て来そうなタイトルですが。
相変わらずの、無駄に詳細でダラダラと続く、確信犯の紋切り型表現の羅列。やったらカッコ書きと脱線の多い、活字なのに何故かのたくる筆跡が見えてしまう、我らが金井美恵子の文体は健在であ〜る。
コレが目で追えるだけで楽しく、正直内容は何でもいいんだけど、うだるような真夏の昼下がりに応えられません〜堪らんわーと、ええ、だいぶM入ってますw。
と言いつつも、谷崎「鍵」の老人が「数え年56歳」って、衝撃!後期高齢者ど真ん中、って印象しかない〜汗。
大岡昇平の「石原慎太郎の瞬き(パチパチ)」も笑える〜
まあでも、シリアスな会話中に、「うずちゅう(渦中)」とか「こくい(酷い)」とか言われたら、吹き出さない自信はないわ、私。人でなしと呼んで〜。
最後の「小さな女の子のいっぱいになった膀胱について」。やったら前置きが長いが、そうか、森茉莉か。。。この文章を読んだ笙野頼子の反応が見たい。
韜晦抜きの「あとがきにかえて1・2」が一層魅力的。
日本堤の喫茶店って、「バッハ」だろうか。しかし、サラッと出てくる「パナマ・ドンパチ・ゲイシャ」って、名前もインパクトあるけど、100g5000円なりの高級豆じゃないか〜
金井美恵子さんの、長い長い文のリズムが好きで、それが気持ちよくて、読んでいる気がする。
特に小説は、中身より文体が好きで、それから内容という順序。そんな作家は私には他にいない。
毒舌ぶり、人間観察の鋭さも好き。
それらはエッセイの方がより直接的なのでエッセイも好き。
その2つが組み合わさったこの作品。
もっと楽しめれば良かったのだが、ちょっと私の集中力が弱まっているのか、あるいはちょっとよくわからないところもどんどん飛ばして読んで行くいつもの元気さがなかったのか、何度読んでもわからないところがあり、いつもの心地よさより、難儀さ、自分のバカさを感じた。
小説と思って読み始めたら、金井さんらしい批評的なエッセイで、それもまたよしと思いつつ読み進めるといつの間にか小説になっており、形としてはエッセイに挟まれた短編集というところなのだが、エッセイとつながっている短編もひとつひとつが完全には終わらす、次へと続くという、まことに不思議な作品。金井美恵子は金井美恵子にしか書けない作品を完成させつつあるのかも。
金井さんの小説を読むと、女たちの間で片手間に続いてきた手芸がたまらなく魅力的で、10才の少女と、妻子ある男と恋愛して別れさせられたということは多分二十歳は越えている女が、刺繍をしながら映画や男の話をするのが、とてもいい。
また、銀幕の名にふさわしい、映画の数々、とりわけべティ・デイヴィスの話は、私はこの映画はみていないが、べティ・デイヴィスのあの大きな白目勝ちの目や、小さく薄いへの字形の、くっきりと口紅の引かれた唇が作り出す表情が、目に浮かんで、殆ど映画を見たような気持ちになる。
映画館の入り口に貼られたスチール写真、海辺の近くの家で過ごす単調な毎日、チャイナドレスの妖艶、サーカスのうらぶれた様子。
幼い頃から無意識に、ときには意識的に取り込んだものが、血と肉となり、何十年もかけて、こういう文章ができるので、そこいらのペラペラの情報を適当に継ぎ接ぎしてできたものとは比較にならない。
まさに、読むことでしか得られない喜びがある。
金井美恵子の文章を読みにくいという人もいるが、私は30年くらい読んで、一度も読みにくいと思ったことはない。
まあ、()の中の文章が長い上に魅力的で、つい()の前の文章を忘れてしまい、読み直すということはあるのだが。
幸せな時間が過ごせた。
久美子さんによる装丁もとても美しい。巻末に使った紙の種類と量が記されていて、これ、増刷するのも大変だろうなと思った。
赤は褪せやすいからカバーは外さず、暗いところで保管したい。
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