むかし写真誌のレイアウター、今は文筆業のおれは、ふと手にした古い雑誌の記事に惹きつけられる。その二人組は愛してやまないアルバムと一番好きな曲が自分と一致し、片割れはかつてのおれと同じくダブル・ベース弾きだった。彼女たち=ソラシドの断片を掻き集め、おれは紡いでゆくーー。クラフト・エヴィング商會の物語作者が描く、失われたものの小説。
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キーワードは、1986年。大量のレコード、そしてソラシドという女性デュオ。
ゆるゆると時間が流れているような感覚。
後半60ページくらいから、今までのことがつながり出す感じ。読んでいて、印象的なフレーズがいくつもあり、思わず書き留めた。
レコードは、確かに子供の頃聴いていた。あのノイズが入るざらつく感じ、よく覚えている。
1986年のミニコミ誌のコラムに出ていた「ソラシド」というデュオを追いかけるアラフィフのライター・ヤマシタ氏。なんだか吉田篤弘さんのドキュメンタリーなエッセイ「チョコレート・ガール探偵譚」を想起させるストーリーです。
文中にはたくさんの洋楽のレコードやアーティストや名曲の名が挙げられていて、私が洋楽に疎くなかったら、どれほどテンションが上がったことでしょう。
ヤマシタ氏と異母妹オーちゃんと義母理恵さん、「ソラシド」のソラとカオルと弟のトオルくん、彼らをサポートしてくれる、レコードや失われつつあるものを愛する人々、みんな温かいです。
ドアの向こうに進むには鍵が必要。
鍵を開けて進む人、鍵が見つからない人
鍵を持っているのにドアを開けない人、
自分はどのタイプだろう。
読後、余韻に浸りながらずっと考えていた。
今年、一番の本かもしれない。
26年前の無料雑誌の小さなコラムに載っていた女性デュオ「ソラシド」。ジョージ・ハリソン好き、ダブルベースを弾いていたという自分との共通点から、どんな音楽を奏でていたのか気になりネットで検索するも、ヒットしない。26年前の彼女たちの音楽を、どうしても聴きたいという思いが強くなり、妹と「がらくた屋」の店主と三人で「ソラシド」の痕跡を探し始める。
1986年と26年後の現在を行き来する物語。
1986年は異母兄妹の妹が生まれた年。
またひとり、好きな作家に、
めぐり逢ってしまった。
最初は時系列、複数の登場人物が入り乱れるので、頭が混乱してしまうが、いろんな方向を向いていたベクトルが、そのうち同じ方向に向かっていく。もう、前にしか進まない。本を読む手が止まらなかった。80年代の音楽も場所も人物も物も空気さえも、粗くて掠れててノイズがあった。今考えるとあり得ない時代、でもどこか愛おしい。
くれぐれも Don't disturb.
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