自然を忘れた現代人に魂のふるさとを思い起こさせる美しい声と、自然を破壊し人体を蝕む化学薬品の浸透、循環、蓄積を追究する冷徹な眼、そして、いま私たちは何をなすべきかを訴えるたくましい実行力。三つを備えた、自然保護と化学物質公害追及の先駆的な本がこれだ。ドイツ、アメリカなど多くの国の人々はこの声に耳を傾け、現実を変革してきた。日本人は何をしてきたか?
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沈黙の春、それは膨大な歴史によって紡がれ、均衡を保ってきた大自然の終わりを意味している。2025年現在、PFASという言葉を最近よく耳にする。これは農薬や工場排水、米軍基地で使われる消火剤によく含まれる化学物質で、沈黙の春に登場する化学物質と同様の性質を持つ。そしてそれは日本各地の地下水や水道水で基準値を大幅に上回る量で確認さている。言い換えれば、人体に既に被害が出ていると言うことである。岡山県吉備中央町での住民による民事裁判の事例もまだ新しい。沈黙の春はまだ私たちの近くにいる。
『三体』の主要人物の人生に大きく関わる作品だったので気になって購入。
当初学術的著書と知らずに購入し、軽い気持ちで読もうとしたら専門用語が多くいつもよりスローペースで読み進めた。
聞きなれない用語は難しかったがデータや分かりやすい論法を用いて丁寧に化学薬品の危険性を説いている。
本作を読んだことで『三体』のラストにより深い意味合いを感じることができた。
中学生の英語の教科書で本書の存在を知り、当時は読みたいとは思わなかったが、あれから20数年が経ち、俄に読んでみたい気持ちが沸き起こった。
60年も前に出版された本だが、当時のアメリカの農業の実態に驚かされた。
次からから次へと強力な農薬を使いまくり、それが農産物内部へ蓄積することを無視し、さらに人へ発病、様々な二時汚染。
本来害虫から農産物を守るための農薬が、その成分が強すぎるあまりに農産物が耐えきれず枯れてしまうという本末転倒さ。
そして農薬にも抵抗を示す害虫たちが繁殖し、それが更に有害な農薬を生み出すことに繋がる負の連鎖。
白血病や内臓疾患、皮膚病が爆発的に増えたのは、まさしくこの農薬が原因だ。
今でこそ低農薬、無農薬農法が市民権を得てきており、私たち国民も農薬への意識をを持ちながら消費活動を行うようになってきている。
ただ、当時のアメリカの時代背景を考えると、 よくもここまで農薬のいろはを調べ上げ、世に向かって発表したなと、その勇敢さに舌を巻く。潮流に逆行する彼女の活動はいかほどセンセーショナルだっただろう。
カーソンは本書で、農薬が人体をはじめ農産物、昆虫などの生物に与える影響を指摘するだけでなく、農薬を極力使用しない具体的な方法も提案している。
P103
雑草に悩まされたら、植物を食べる昆虫の働きを注視してみる。
食物連鎖の流れをよく見てみる。
P169
アメリカでヒアリを絶滅させるために使われたヘプタクロールは、DDTに匹敵する劇薬で、水棲生物に害を及ぼす。
陸に撒かれた薬物は、最終的には流れ流れて水に行き着き、そこを汚染する。
P215
当時、アメリカの農薬に記載されていた使用方法などは文字が小さく、農夫たちはよく読まないまま適切量を無視して過剰に使用していたと。
レタス栽培現場では、一つだけで十分なのに八つも混ぜて使っていたなどの殺虫剤乱用が起きていた。
実際私たちの口に入る農産物の農薬残留量は明確に分からず、それが多種多彩なため、この程度なら安心だ!と言いきるのは難しい。
P220
昆虫の間に病気を発生させ、防除するやり方もある。
危険度の低い農薬を使い、非科学的な方法の開拓に力を入れることを、カーソンは推奨している。
最後に解説で、興味深い事柄が書かれている。
害虫Aを除去する目的である薬剤を使ったとする。それが成功し作物Bが虫害を免れた。
しかし害虫Aによって食い殺されていたC.Dという害虫が抑制因子を取り除けられて爆発的に増加し、新たな害虫となって作物Bに襲いかかる。
という例が多数あるという。
生態系の恐ろしさを痛感した事例だった。
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