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(プロローグ「号泣する準備はできていなかった」より)
ペットを飼っている人で、いつか来る「その日」のことを考えない人はいないだろう。自分もそうだった。だが、いざ「その日」を迎えてみると、予想していたはずの衝撃に、ほとんど何の備えもできていなかったことを思い知らされた。
ミントが亡くなって2日後のことだ。冷蔵庫を整理していた妻が「こんなの買ったっけ?」と手にした「カブ」を見て、反射的に涙が出た。それはあの日、スーパーで買ったカブだった。ミントの食欲が衰え始めたとき、犬用の自然食の製造・販売を手掛けている友人に相談したところ、「『カブのすりおろし』がいいんじゃないかな。そういう状態でも、それなら食べられるという子もいるから」と言っていたのを思い出して、カゴに放り込み、続いて精肉売り場で「大好きな鶏ナンコツなら食べられるかな。それとも目先をかえてラム肉にするか」などと考えていたときに、ミントは旅立ったのだ。この10分のロスのせいで、最期の瞬間に立ち会えなかった──。
カブを見て泣きながら、そんなことを一気に思い出した。思い出したから泣いたのではなく、身体が勝手に反応して涙が出た、という経験は初めてだった。四十すぎの男がカブを見て、しゃくりあげる姿に自分で戸惑いながら、「これはマズい」と思った。号泣する準備はできていなかったのだ。
これが「ペットロス」というものなのだとすれば、事前に思い描いていたものとは全く違う。何となく日常生活でミントの不在を感じるたびに寂しくなるのだろうと想像していたが、実際に我が身に起きた心と身体の反応は、自分で制御することが不可能なほど激烈で、空恐ろしい気すらした。
(略)
「ペットロス」とはいったい何なのだろうか。その衝撃を和らげる方法はあるのだろうか。そもそも「ペットロス」を乗り越えることは可能なのだろうか。
疑問は次々と湧いてくるが、インターネットで調べてみても、なかなか自分が必要としている情報には辿り着けなかった。この経験が本書の出発点である。
●伊藤秀倫(いとう・ひでのり)
1975年生まれ。東京大学文学部卒。1998年文藝春秋入社。「Sports Graphic Number」「文藝春秋」「週刊文春」編集部などを経て、2019年フリーに。ヒグマ問題やペットロスなど動物と人間の関わりをテーマに取材している。現在は札幌在住。
挿絵=ひろはたゆきち
年間約36万人もいる予備軍。ペットロスとは何か?重くなりやすい人とは?なったらどうすれば?和らげる方法は?著者自身の壮絶な体験と綿密な取材にもとづく、ペットロスになる前もなった後も、まず読むべき一冊。
第1章 「ペットロス」とは何か?/第2章 最初の“備え”は「よきホームドクター」/第3章 実録・私のペットロス/第4章 ペットロスアンケート 45人の「物語」/第5章 最後の“備え”は「お別れのセレモニー」/第6章 ペットを亡くしたら花を飾ろう/第7章 アメリカにおける「ペットロス」最前線/第8章 上沼恵美子さんの場合/第9章 壇蜜さんの場合/第10章 悲しみを和らげる方法はあるのか?/第11章 新しいペットを迎える
伊藤秀倫(イトウヒデノリ)
1975年生まれ。東京大学文学部卒。1998年文藝春秋入社。「Sports Graphic Number」「文藝春秋」「週刊文春」編集部などを経て、2019年フリーに。ヒグマ問題やペットロスなど動物と人間の関わりをテーマに取材している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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自分自身の経験を振り返りながら読んだ。
最初は悲しみや苦しみに圧倒されそうになるが、悲しみと共に、それをはるかに上回る幸せや愛を残してくれたことへの感謝や幸福を感じれるようになる日がきっとくる。そこへ向かってゆくために、まずは悲しみ、気持ちを打ち明け、もしくは看取りや葬儀などの儀式を踏んでいくことも重要。
■グリーフワークはどのように進んでいくのか
「グリーフワーク」といえばアメリカの精神科医、エリザベス・キューブラー・ロスが著書「死ぬ瞬間」に置いて提唱した「死の受容過程(死にゆく過程の心理学的段階)」がよく知られている。これはガンなどで死期を目前にした患者が自らの死を受け入れる過程を5段階で示したもの。
①否認─「自分が死ぬなんて嘘だ」と事実を否認し、周囲から孤立する段階
②怒り─「どうして自分が死ななければならないのか」と怒りに囚われる段階
③取引─何とか死から逃れようと神仏への祈りなどを通じて取引を試みる段階
④抑うつ─死から逃れられないことを悟り、絶望や諦めで気分が落ち込む段階
⑤受容─死を「誰にでも訪れる自然な現象」として納得し、受け入れた段階
この「死の受容過程」モデルは、しばしばペットを亡くした飼い主の心理的段階を説明するのに用いられる。
■ペットロスは、飼い主に人間的成長をもたらす。
グリーフワークの過程でそのペットが与えてくれたものや、命の大切さを実感し他者の悲しみへの共感性が増す。そうした経験はその後の人生の貴重な糧となる。
これを心理学用語では「ポスト・トラウマティック・グロース」(心的外傷後成長)という。
ありがたいことに猫のほうがまず先に逝ってくれる。でもそれなりに堪えるのだろうなあ。犬の話が多いのは著者が犬を飼っていたからか。それなりに家族なんだなあ。ちゃんと嘆いてゆっくり送る方がいいということのようだ。
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