小中学校で毎日のように口にしてきた給食。楽しかったという人も、苦痛の時間だったという人もいるはず。子どもの味覚に対する権力行使の側面と、未来へ命をつなぎ新しい教育を模索する側面。給食は、明暗二面が交錯する「舞台」である。貧困、災害、運動、教育、世界という五つの視角から知られざる歴史に迫り、今後の可能性を探る。
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学校給食の歴史の中から関係者達の苦労や問題点を探っている。「全ての子供に対し心身ともに健康な食事を提供する」理念が貫かれている。
終戦後のアメリカによる給食用食材の提供には数々の思惑が絡んでいたことは以前他の本でも読んだ。国内外問わず、産業界の利益を優先した結果発生した問題も多かったようだ。そして貧困によって食事を安心して摂れない子供達は現在でも多く、「食べられない」だけでなくそれによる感情面のダメージも非常に大きく、何があっても学校給食は平等に与えられなければならないことが繰り返し強調されている。
コロナ前に書かれた本なので「黙食」の話題は出てきていない。みんなで楽しく食事ができる機会が減ってしまったことも、今後は大きな課題になるだろう。
参考文献の引用の丁寧な書き方、最初に本全体の概要、
流れを説明し、章ごとに深掘りしていき、
きちんとそれまでを振り返りまとめて終わり、という本の構成が好みで、読んでいて満たされました。
自分語りや、表立った感情論はなく、根拠として事実関係の引用を用いて自分の意見の方向性を述べるところが読みやすかったです。
給食の恩恵は受けてきたけれど、その当時は子供だったため、どれほどの苦労や思いがあってのものか露知らず。年齢的には、今度は親になって給食に関わる段階でしょうがいまだその機会はないため給食はテレビで報道される異物混入の報ぐらいでしかほぼ触れることがなくなっていました。「おいしい給食」というドラマに出会い、面白く楽しんで見ていましたが、そんな風に楽しむだけで、取り立てて真剣に、真面目に大事な問題として給食に思いを馳せるという概念がなく、この本に触れて初めて、給食の歴史、政府、保護者や栄養教諭の活動などを見て、多くの人の尽力で成り立っているんだなと感心しました。
この本に出会わなければ、知ることもなかったです。
この本を手に取ったのは「ゼロからの資本論」に引用されており、興味を持ったからです。
効率化、コストカットなど、利便追求をしてしまうと大事なものを見落としてどんどん味も温度もなくなっていくんだなとしみじみ思わされました。
生きる上で欠かせない身近な「食」に関わることだからその危機感がわかりやすかった気がします。
資本主義に飲み込まれ振り回される世の中で、効率優先ではない体制がまだ残っていること、それが給食だということ、盲点というのか灯台下暗しというのか。
失われず残っていってほしいし残していかなくてはならない。
給食に対して絶対にブレてはならないこと、貧困児童のスティグマとならない。はい。
この視点、心に刻んで生きたいです。
とても良かった。日本で生まれ育った日本人は、学校で給食を経験しているはずである。もちろん海外にも同様の制度はあるが、本書では日本で給食が始まった理由、進化の過程、さまざまな葛藤、今後の課題と給食の持つ役割が論理的に書かれており、興味深く学ばせてもらった。本書を読めば日本の給食の成り立ちから意義からすべてがわかる。
日本の給食は江戸時代終盤ごろ始まったとされるが、その意義は常に貧困家庭の子どもの救済にあった。その過程で常に、助けを受ける子どもが恥をかかないように、との細心の配慮がされてきた。
戦後はGHQが給食の復活を強く推し進めたことも初めて知った。もちろん、アメリカの意図としては、日本の子どもたちの健全な発育以外にもアメリカ製の食材を売りたいという下心があったわけだが、結果として子どもたちが救われた側面もあったようだ。
給食職員(今は給食教諭と呼ぶらしい)の人たちや、母たちの働きかけで制度や法律がどう変わっていったのかも知る意義がある。
小学校時代の給食を思い出しながら読んだ。本書で出てくる、脱脂粉乳やクジラ肉やソフト麺は経験したことがない。中学と高校は弁当だったが、当時働いていた母の負担を考えると、給食があったらよかったと思った。
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