原油高を背景に、世界中のマーケットを席巻するオイル・マネー。しかし、その担い手たちの肖像はベールに包まれている。彼らは情報開示義務のない同族企業を舞台に、イスラム圏独特の商慣行と人脈を駆使して、秘密裏に資産をふくらませ続けているのだ。欧米企業を買いあさるサウジの王族投資家、「ハコモノ行政」で大成功したドバイの首長、カネ余りのアブダビやカタルの政府など、アラブの大富豪たちの素顔に迫る。
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イスラムは、一夫多妻制の国、複数の妻をもっても、正室、側室の区別はなく平等に扱われる
サウジアラビアの石油の可採年数は70年であり、21世紀の終わり近くまで女神のほほえみは続きそうである。
ビンラディンの実家は、サウジ最大の建設企業である。
サウド家と財閥らとの間には1つの約束事があった、それは、豪商たちが、サウド家を財政支援し、その見返りとしてサウド家が彼らのビジネス活動の自由と安全を保障することだ。
ペルシャ湾のアラビア半島側には6つの王政国家がある。クウェート、サウジアラビア、バハレーン、カタール、UAE、オーマンである。6カ国は、湾岸協力会議(GCC)と呼ばれる地域共同体を結成している
ドバイのGDPに占める石油の割合は5%にすぎない。ドバイは、石油でなりたっている国ではない
サウジの、アルワリード王子は、シティバンクの危機をすくった。
人は過ちに学ぶ、というが、時がうつり、人がかわり、国がかわれば、同じ過ちを繰り返すのが人であるというほうが正しい
サウジでは、女性がビジネスの全面に立つことには拒否反応が強い。そのため、王女は慈善活動の分野で働いている。
オイルマネー、オイルダラーは、和製英語、正式な英語名は、ペトロダラーだ。
アメリカに守ってもらうかわりに、石油の決済をドルでやろうというのが、中東での約束である。
ヨルダンのハシミテ家は、イスラム教の開祖であるムハンマドの直系の子孫として、中東では右にでないほどの名家である
欧米の銀行は、安い金利で預かった、オイルマネーをファンドに投資することで、利ザヤを稼いている。
産油国は、おいしいところを銀行に吸われている
アラブの政商のルーツ。イスラム世界では、宗教と経済の相性はいいが、同時に宗教と政治も深く結びついている
サウド家は、英国や、日本の王室に親近感と、敬意を抱いている。それは、GCC各国の王家も同様である。
目次
はじめに
第1章 サウジアラビア王家と御用商人たち
第2章 世界一多忙なドバイのCEO
第3章 王族投資家アルワリード王子
第4章 踊る湾岸マネー―アブダビ、カタル、クウェイト
第5章 ムハンマドの末裔、ヨルダン・ハシミテ王家
第6章 アラブの政商
あとがき
ISBN:9784106102516
出版社:新潮社
判型:新書
ページ数:192ページ
定価:680円(本体)
発売日:2008年02月20日発行
発売日:2008年09月10日6刷
中東の入門書としては適切な本。2008年発刊のため、内容は少し古いかも知れないが、10年以上たった今でもあまり変わっていないでしょう。
中東のイメージは、戦争・テロ・石油・砂漠だったが、そのイメージは覆らなかったものの、その背景や影響を知れるきっかけとなった。
政治、経済、商売。アラブ地域ではその全てにイスラム教が関わっており、一部で大量産出される石油の歪な構造を理解する一助となった。アメリカとは違って、アラブの経済の動き、私企業の財務は完全に秘匿されており、正確な情報が掴めないながらなんとなくアラブ世界のお金の動きを理解できた。
UAE 、サウジ、バーレーン、カタールなんかのGCCの国民一人当たりの総所得が著しく高くて、羨ましい。国家にお金が有り余ると、税金を無くし、教育医療など社会福祉を充実させ、公務員の給料が爆上がりするらしい。この、グローバル資本主義社会で、一度巨大な資本を手にしたら、あとは不労所得で腹がはち切れるほど満腹で生きていくことができるんだなと。
著者は、アラビア石油やJETROに勤務して中東ビジネスに長く関わってきた人物。
リタイア後に「アラビア半島定点観測」というブログを開設したところ人気ブログとなり、経済雑誌の取材を受けるようになって、ついには新潮社から声がかかった、というのが本著を出版することになった経緯だそうで、カリスマブロガーでもあるわけです。
サウジアラビア、UAE、オマーン、バーレーン、カタール、クウェート、ヨルダン…サッカー日本代表のアジアでの戦いのライバルとしては馴染みの国ばかりですが、それぞれの国にどんな特徴があるのかはなかなか分かりづらい。
というか、アラブ人ってみんないっしょに見える。
ヒゲヅラで顔も似てるし、みんな同じような名前だし…
そんな一緒くたに見える中東諸国の王族を中心に、そのプロフィールと行動形態を分かりやすく解説してくれる中東諸国入門書。
たとえば、今やオイル・ブームの象徴として金融センター・観光地としてのステータスがぐんぐん上がっている、中東のコスモポリタン・ドバイ。
ドバイはUAE(アラブ首長国連邦)を構成する首長国の一つですが、実はドバイ首長国自体の産油量はさほど多くないそうなんです。
首長自らが近隣諸国のオイルマネーを借り入れて、港湾・空港・自由貿易特区などのインフラ投資を積極的に行うことで金融・物流・観光の一大センターとしての現在の位置を築いたんだそうで。
そんなこと全然知りませんでした。
ここのところの原油価格高騰でオイル・マネーが耳目を集めていますが、この地域の国々の歴史ってすごく浅いんですよね。
原油が採掘されて豊かになったのはほんのここ数十年のことで、それまでは「アラビアのロレンス」に出てくるような砂漠の民ベドウィンが跋扈する未開の地だった。
それが今や王族たちは世界有数のお金持ち、オイルマネーは国民にも行き渡り優雅な暮らしを謳歌している。
たまたま石油の出る地域に住んでいただけなのにね…つくづく人間社会って不平等だなと思わずにはいられませんが…
文章も非常に読み易く、一気に読める面白い一冊でした。
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