弱体化した母校・一高野球部の窮地に、コーチを託された宮本銀平。現役時分は万年補欠、今はしがない文具業界紙の編輯長ながら、宿敵の三高、資金潤沢な早慶らとの対戦を重ね、自身の野球熱も再燃していく。やがて人気作家・押川春浪のティーム「天狗倶楽部」にも引き込まれるが、折しも大新聞による「野球害毒論」の波が押し寄せて……。明治野球の熱狂と人生の喜びを鮮やかに綴る、痛快長編。(解説・北上次郎)
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心震えしびれる野球小説。
明治の野球創世期のお話。
野球に魅せられ夢中になる選手たち、熱狂するOBたちは今も変わらず、たくさんの野球あるあるにクスッと笑ったり。
主人公は高校時代は万年補欠で、その後母校のコーチとなる人。
ちょうどこの4月から母校の高校野球部学生コーチになることが決まった息子と重なり、ぐっときました。
この状況で部活動もできず、まだコーチデビューはできていないけれど、コーチを通してまたいろいろ悩んだり学んだりするのだろうな。
野球ができること、応援できることはどんなに幸せなことだったのかと読みながらしみじみと。
意外と言っては失礼になるのかもしれませんが、木内さんの既読作品と比べると終始明るめのトーンで物語が進むのが印象的でした。
前半から中盤にかけては、弱体化した母校の野球部の再建に主人公が試行錯誤する様子が描かれます。チームと共に成長していく姿はよく描けていると思いますが、コーチという役割上一歩引いた視点が多く、一高vs三高の試合の場面も少しはしょった感があり、期待したほどの臨場感は無かったかなと。そんなわけで第四章までは少々盛り上がりに欠けた印象を受けました。むしろ柿田の出奔とその後の顛末や、塁を見失うといったいったサイドストーリーのほうが面白かったです。
後半は「野球害毒論」を掲げる新聞社を相手に、野球とは何か、人生とは何かを探し求める展開が中心となり、こちらは大変興味深く読めました。現代の視点でみると野球に対して無茶苦茶な言いがかりが羅列され、記者の開き直りともとれる尊大な態度には呆れるばかりでしたが、それに屈せず立ち向かう主人公と押川という作家の姿には、野球を知らない読者にも大いに共感を生むんじゃないかと想像します。まあ本作の裏の主役は押川ですかね。下手だけど野球大好きなおっさんで、こちらを主人公にしてもよかったんじゃないかと思えるようなキャラクターでした。
押川に限らずどの登場人物も一人一人きちんと描かれている点も好印象で、総じて楽しめましたが、たぶん著者にとっては水準作の範囲内だと思うので、次はもっと凄い作品を期待します。
野球が好きだ!
好きで好きでたまらない!
まだプロ野球も夏の甲子園もなかった頃。
どんなに一生懸命野球をやっていても、将来役に立つわけでも、もちろんお金になるわけでもなかった。
それでも若い情熱も若くない情熱も野球に込める。
そんな登場人物たちの物語は、野球が好きすぎるあまりニヤニヤが止まらない。
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