2,640円(税込)
月旅行を目指す高校からの四人組。西部戦線帰還兵のクリスマス。変わり者の億万長者とその忠実な秘書。男と別れたばかりの女がつい買ったタイプライター。ボウリングでセレブに上り詰めた男ーー。「良きアメリカの優しさとユーモアにあふれる短篇集」と各紙で賞賛された、人生のひとコマをオムニバス映画のように紡ぐ17の物語。
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https://opac.lib.hiroshima-u.ac.jp/webopac/BB03353326
「小説家 トム・ハンクス」のデビュー作は短編集。各所で彼の俳優経験も活きており、全体的に優しい風合い。普段はハッピーエンドより考えさせられる話を選びがちだが、たまには甘いものも食べたくなる。まぁその中にはほろ苦さもあったのだが。。
全17篇をレビューするのは自分にとって至難の業なので、幾つか気に入ったのをピックアップしていきたい。うち数作品には内容が連関しているふしがあるけど、どの話も単品(⁉︎)として満喫できる。おまけにビターとスイートの調和もよく取れている。
『クリスマス・イヴ、一九五三年』
出だしは古き良きアメリカのクリスマスといった風。そこから10年前に遡り、冒頭の幸せは奇跡的に掴み取れたものだと読者は痛感することになる。ベトナム戦争の2年前でもあるからそれは益々貴重なものだということも。
『心の中で思うこと』
著者がタイプライター蒐集家であることから、ほとんどの章でタイプライターの描写や写真が登場する。(少々くどかった笑)
中でも本作はタイプライター自体がメインテーマとなっており、尚且つ一番落ち着けた話だった。タイプライターは今でいうラップトップの筈なのに、主人公の女性みたいに妙な憧れを抱いてしまう。店主と女性の談義に自分ものめり込み、人生を変えるであろう一台に出会えた彼女のこれからに想いを馳せた。
『過去は大事なもの』
ジャンルとしてはSFにあたり、恐らく読者の多くが好きになった作品だと思う。何故なら普段はSFに疎い自分でも夢中になれたから。
過去へのタイムトラベルが可能となった現代で、主人公バートが1939年6月8日へと時間旅行する話。「過去の写真に当時の服装にそぐわない人物が写っている」という都市伝説チックな話を耳にするが、本作では時間旅行会社なるものが当時の服装を手配してくれる。(他にも処置が盛りだくさんで全部が面白い!)
何度同じ年月日(+時分秒)に遡ってもみんな合わせ鏡のように同じ言動をしている。当たり前のことだが、いざその現象を目の当たりにすると不思議な気持ちで頭がボーっとしてしまう。無論、ラストにも。
『ハンク・フィセイの「わが町トゥデイ」』
17篇のうち4篇は地方紙コラムニストによる「わが町自慢」のコラム。書き手の風貌が分からない分、どんな表情で記事を書いているのか等想像が膨らんでいく。内容はどうってこともないのだが、4篇を経てイメージが出来上がっていくのが何となく愉快だった。全篇にわたりタイプライターへの郷愁の念が強いことから、ひょっとしたらハンクさんはハンクス……何でもありません。
途中まで著者特有の柔和ボイスで再生されていたが、以降は何度も著者のことを忘れるくらい読みふけった。筆のパフォーマンスもお上手だったとは…!
面白くないわけがない。
俳優としてあれだけの役をこなした上、監督や制作でも才能を見せつけて、足りないのは「時間」だけ。
有名であるが為、最初から高いハードルがある。何もしなくても既に名声を得ており、その分やや損しているにもかかわらず…。
とにかく、読み進めていくと登場人物がどんどん映像化されていく。
『ようこそマーズへ』や『特別な週末』は、そのままで「少年の成長」ドラマのエピソードとなり、『ヘトヘトの三週間』『アランビーン、ほか四名』『スティーヴ・ウォンは、パーフェクト』は「おかしな四人のオシャレな生活」となる。
『クリスマスイヴ・一九五三年』は映画『プライベートライアン』のようなドラマに膨らみ、『コスタスに会え』はそれだけで社会性の強い映画が一本できそう。
才能がうらやましい…。
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