長崎県・島原半島のほぼ中央に位置する雲仙といえば、温泉地として有名です。そして次に頭に浮かぶのがもくもくと湧き出る噴煙に包まれた「雲仙地獄」の壮大な景色。ですが、雲仙の魅力はそれだけではありません。
高山植物や四季折々に変化する木々に囲まれ、さまざまな野鳥が生息する自然の宝庫。さらに火山灰に育まれた豊潤な土地で育ったおいしい野菜や肉、新鮮な魚など、料理人を魅了する素材が揃っている雲仙はグルメスポットとしても注目を集めています。そんな魅力の詰まった雲仙温泉街は1泊してゆっくりと堪能するのはもちろん、時間がなければドライブがてら半日で旅するにもちょうどよいスポット。雲仙の良さを体感しながらSNS映えも叶う観光ルートを紹介します!
雲仙温泉までは、長崎空港より車で「諫早(いさはや)」ICを経由し約1時間30分。旅行の際にはレンタカーが便利です。もしくは、長崎空港からバスに乗り「諫早」駅で下車し、島鉄バス雲仙方面行きに乗り換え約2時間「小地獄入り口」で下車すれば到着。
標高約700mにある雲仙温泉街は夏でも涼しいため、古くから外国人が集まる避暑地として愛されてきました。今もその名残を感じさせる温泉街は白い壁と赤い三角屋根が多く、街全体がハイカラな雰囲気です。
長崎県で一番高い場所から雲仙の自然を望む 雲仙ロープウェイ
昭和9(1934)年に、日本初の国立公園に指定された雲仙。ここには四季折々の雄大な自然を満喫するために登山客が多く訪れます。登山をする時間がないなら、仁田峠から「雲仙ロープウェイ」へ。長崎県で一番高い標高約1,333mの妙見岳展望台に登れば、雲仙の自然を360度の大パノラマで体験することができます。
雲仙ロープウェイ
- 住所
- 長崎県雲仙市小浜町雲仙551
- 料金
- 往復大人 1,290円、往復こども650円
- 詳細
- 雲仙ロープウェイ 公式ページ
約1300年前、雲仙とともに始まった温泉(うんぜん)神社
車やバスを降りると「ザ・温泉!」という、硫黄の香りが漂う雲仙温泉街。まずは温泉街の入り口にある「温泉神社」へ。ここの呼び名は「おんせんじんじゃ」ではなく「うんぜんじんじゃ」。「雲仙」はもともと「温泉」と書いて「うんぜん」と読んでいたそう。この神社はその名残りのまま温泉神社と書いて「うんぜんじんじゃ」と呼ばれています。
境内の奥には寄り添うように立つ2本の柿の木がまつられていて、恋愛成就のパワースポットとしても話題です。
境内に温泉の守り神のように鎮座する、茶トラ猫を発見! 温泉が豊かに湧く雲仙では、地熱の温かさで猫ものんびりと過ごしているのだとか。
温泉神社
- 住所
- 長崎県雲仙市小浜町雲仙319
- 参拝時間
- 自由
奈良時代の名僧で雲仙の祖・行基が建立した満明寺
温泉神社の向かい側、小高い丘に建つのが満明寺。大宝元(701)年、飛鳥~奈良時代の名僧・行基がこの地に建立し、温泉山を開山したと言われています。かつての雲仙は信仰対象の山であり、多くの修験道が集まっていたそう。
満明寺
- 住所
- 長崎県雲仙市小浜町雲仙321
- 参拝時間
- 自由
噴煙が立ち上る荒涼とした風景は圧巻! 雲仙地獄
道路に湧き出る噴煙で前が見えなくなるほどド迫力の「雲仙地獄」。国道57号線の道路まで噴煙がやってきて道を通せんぼ。寒い時期ほど噴煙の量が増えるそうで、気圧の低い冬の寒い日は1歩先も見えないほどの噴煙で覆われます。
雲仙地獄までは、温泉神社、満明寺どちらからも徒歩すぐ。
道路にはここでしか見ることができない!? 湯気注意という看板が!
国道57号線から噴煙の中へ。1時間ほどで回り切れる遊歩道が整備されています。
雲仙地獄には約30の地獄があり、中でも駐車場だった場所のアスファルトの下から誕生した「いぶき地獄」は、2021年に名前が発表されたという世界一新しい地獄(2022年4月時点)。噴煙と水蒸気を上げる地獄の位置も年々変わっていくというのを聞き、雲仙が今も生きている火山であることを実感します。
遊歩道のゆるい坂道を上がると現れたのは「お糸地獄」。密通した後、夫を殺してしまったお糸という女性が処刑された頃、この地獄が吹き出したため「お糸地獄」と名付けられたそう。
白い噴煙の向こう側に見える十字架は雲仙キリシタン殉教碑。江戸時代のキリシタン禁制の際、拷問を受けて殉教したキリシタンの鎮魂碑。つらい歴史の一端を垣間見ることができます。
お糸地獄の目の前にあるのが「雲仙地獄茶屋」。以前は卵売りがたくさんいた雲仙地獄ですが、今は地獄内で温泉たまごを買えるのはここだけ。
レトロなパッケージの「温泉(うんぜん)レモネード」(250円)と温泉たまご(お土産箱4個入り 400円)。塩のきいた蒸し卵とラムネのような爽やかな甘さのレモネードの相性はぴったり!
雲仙地獄茶屋
- 営業時間
- 4~10月:9:00~18:00
11~3月:9:00~17:00
※当面の間は、10:00~16:00
雲仙地獄茶屋の向かい、雲仙の地熱を体感することができる「足蒸し」スポットへ。ベンチに座り足をのせると、靴下を履いていてもかなりの熱さ。やけどには十分ご注意を。
道を歩いていると、ゴオオオという噴気の音とともに鳥の声が聞こえてきます。雲仙は野鳥の種類が多く、狭いエリアに数1,000種の野鳥が生息するため、バードウォッチングのメッカだとか。
遊歩道の坂を上り切り雲仙地獄の一番高い位置にあるのが、現在、最も活発な噴気活動をしている「大叫喚(だいきょうかん)地獄」と呼ばれる一帯。ときには30~40mの噴気が上がることがあるというから驚きです。
雲仙の自然の恵みを堪能するランチスポットへ
県内外からこの味を求めてやってくる人気洋食店「グリーンテラス雲仙」
明治~昭和初期にかけて避暑に訪れた外国人が宿泊した「雲仙ホテル」の跡地に建てられたという「お山のカフェレストラン グリーンテラス雲仙」。雲仙地獄入り口からは歩いてすぐ。広々とした敷地で、わんちゃん連れなら外のカフェスペースで食事ができます。
敷地内にはヘレン・ケラー女史も訪れたという雲仙ホテルの温泉にちなんで「ヘレン・ケラーの湯」という足湯を無料で楽しむことも。雲仙の自然を楽しみながらの足湯は一瞬で旅の疲れが癒される気持ちよさ。源泉そのままの温度なので、よくお湯をもんでから入りましょう。
「グリーンテラス雲仙」のメニューは雲仙でとれる素材を使った洋食。中でも県内外からこれを目当てで訪れる人が後を絶たないという「雲仙牛のビーフシチュー」(パンorライス付き 1,930円)は、仔牛の骨を10日間煮込んだフォン・ド・ヴォーと雲仙牛を使った塩見正彦シェフのこだわりがつまった逸品。
口の中に入れると牛肉がとろけるほど柔らかく、味わい深いシチューは、これだけを食べに雲仙に来る価値のある忘れられない味です。
見た目にも美しい「雲仙牛カツ オムハヤシ」(2,400円)。雲仙牛の赤身肉のカツと雑穀米のピラフを包んだオムライスを特製デミグラスとハヤシ2層のソースでいただきます。
肉も卵もすべて地元産。「雲仙は食材の質が高いので、食材を活かした料理をいろいろ工夫できるから楽しいんです」と塩見シェフ。赤身とは思えない肉の柔らかさと太陽のように明るい卵を使ったオムライス。この味を求めて週末は多くの人でお店がにぎわいます。
グリーンテラス雲仙
- 住所
- 長崎県雲仙市小浜町雲仙320
- 営業時間
- 11:00~16:00(LO 15:30)
- 定休日
- 不定休
- 詳細
- グリーンテラス雲仙
雲仙の自然を豪快にハンバーガーで食らいつく!「雲のなかcafe」
雲仙地獄より徒歩約5分。雲仙温泉街で一二を争う古民家を改装した「雲のなかcafe」は、まるでおばあちゃんの家に遊びに来たような居心地のよい落ち着いた店内。
ここの名物は雲仙にゆかりのある材料で作ったその名も「雲仙ジオバーガー」(900円)。バンズは雲仙温泉街の人気店から仕入れ、パテは雲仙牛と雲仙ポークをミックスし、野菜は島原産のものを採用。豪快にかぶりつくとボリューム満点なのに、意外にさっぱりした味わい。ペロリと食べられます。
もうひとつの人気メニューが「雲のソフトクリーム」(500円)。オーナーの武田和敏さんが近隣の牧場の牛乳を飲み歩いて佐賀の牧場と契約したというソフトクリームです。濃厚なミルクの味は感動もの。夜は地酒なども揃うバーとして営業中。
雲のなかcafe
- 住所
- 長崎県雲仙市小浜町雲仙372
- 営業時間
- 11:00~24:00
- 定休日
- 月曜日(祝日の場合は火曜日)
140年の歴史を誇る「湯せんぺい」をお土産に!
温泉神社の正面、温泉街の入り口にあるのが雲仙名物「湯せんぺい」で有名な「遠江屋(とおとうみや)本舗」です。「雲仙湯せんぺい」のはじまりは明治時代。温泉好きの旧島原藩主・松平忠和に献上するお菓子として製造がはじまったそう。
今は機械で焼いている湯せんぺい。昔の製造法を継承した1枚1枚手焼きの湯せんぺいを復活させた父親とともにその味を守るのが、遠江屋本舗の加藤隆太さんです。
材料は小麦、砂糖、卵、重曹、そして温泉水だけととてもシンプル。舌にのせるとシュワっと溶けて、やさしい甘さが口いっぱいに広がります(1日300枚限定 純一枚手焼き湯せんぺい10枚入り 1,000円)。
「湯せんぺいは長崎県民なら誰でも知っているお菓子ですが、食べたことのない若い世代が増えています。そんな若い方たちに手に取ってほしいと試行錯誤して作ったのが、砕いた湯せんぺいをチョコレートに入れた湯せんぺいチョコバー(200円)や、巻いてチョコを流し込んだ湯せんぺいシガーロール(150円)です」と加藤さん。新しい時代の湯せんぺいはお土産としても人気です。
店内ではコーヒーと湯せんぺいのお菓子のセット「ほっこりぶらりセット」(400円)もいただけます。
遠江屋本舗
- 住所
- 長崎県雲仙市小浜町雲仙317
- 営業時間
- 8:30~19:00(変動あり)
- 定休日
- 木曜日
- 詳細
- 遠江屋本舗 公式ページ
ピクニックセットをレンタルして雲仙でピクニック楽しむ!
せっかく自然豊かな雲仙を訪れたなら、アウトドアピクニックを楽しむのもおすすめ! 手ぶらで来てもピクニックを楽しめるように、温泉街の入り口に位置する雲仙温泉観光案内所では「雲の上のピクニック」と題し、ピクニックセットの貸し出しやランチメニューの手配をしてくれます。おしゃれな写真が撮れたらSNSに投稿! これまでとは違う私だけの雲仙旅を満喫できます。
雲の上のピクニック
- 利用方法
- レンタルアイテムやランチメニューをピクニックの2日前までに予約し、当日は雲仙温泉観光案内所でグッズとランチを受け取り
- 貸し出し時間
- 12:00~18:00
- 料金
- 2,000円(ランチ代は別途)
- 予約・問い合わせ
- 雲仙温泉観光協会 0957-73-3434
帰りがけには各ホテルや旅館の日帰り温泉や共同浴場に寄って美肌にいい酸性硫黄温泉を満喫。雲仙の自然を感じながら映えるスポットを探し、お腹が空いたら地元素材を活かしたおいしい料理を食べ、温泉に浸かる……。旅の醍醐味がギュッと凝縮された雲仙の旅。次のお休みに出かけてみませんか?
ご紹介した雲仙温泉街の観光スポットMAP
取材・文:山本美和 撮影:田辺エリ