大吉田藩七十万石の正嫡順二郎は、四歳の時、側室一派の陰謀によって廃嫡され、国許で幽閉同然の生活を送る。ところが、二十四歳になった時、世継ぎとされていた側室の子が突然死亡し、順二郎は隠密裡に江戸表へ迎えられる事になるが……。お家騒動の渦中に投げ込まれた世間知らずの若殿の眼を通して、現実政治に振り回される人間たちの愚かさとはかなさを諷刺した長編小説。
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軽快な文章で物語に入りやすく、間抜けな馬鹿殿様の珍道中で、大御所の作品にしてはこんな「アホ」な作品で良いのかと思ったら、最後の対面シーンで一気に胸が熱くなった。
大吉田藩七十万石の正嫡順二郎は、四歳の時、側室一派の陰謀によって廃嫡され、国許で幽閉同然の生活を送る。ところが、二十四歳になった時、世継ぎとされていた側室の子が突然死亡し、順二郎は隠密裡に江戸表へ迎えられる事になるが……。お家騒動の渦中に投げ込まれた世間知らずの若殿の眼を通して、現実政治に振り回される人間たちの愚かさとはかなさを諷刺した長編小説。
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周五郎風の風刺を効かせた癖の強い話。周五郎の滑稽物は癖が強い。というか何かを風刺するときには滑稽さというか悪ふざけを大げさにすることでマイルドにしている感じなのかと。
主人公が特に自覚も危機感もないまま騒動に巻き込まれつつも、主人公の素質や自力でもって自体が進んでいくという様は最近の”なろう小説”のようですらあるけど、物語の向かうところは違っていて、締めの持っていき方はなるほどというところでしたし、そこら辺に風刺の効いているところなのかとも思う。キャラの立ち方も良い。「超高速!参勤交代」みたいなノリの映画にしたらいまでも面白いのではないかと思う。
風刺のきき場所について。周五郎は政治をきれいなものとしては描かない。周五郎の描く政治を引き受ける人間は業を背負っていることが多くて、そして街の人間たちにしてみれば関わりの濃いものとしては描かれていない。これは江戸時代の話であって、明治の話なのかもしれなくて、現在の日本政治や社会の姿なのかもしれなくて。
側室派の陰謀により廃嫡されお蚕様のように育てられた順二郎がいかに目覚めてゆくか。登場人物がやたらと多いにも関わらず皆いきいきと頁のなかで暴れている。とはいえ基本的にこれは喜劇だ、電車の中で読んでいて苦しいほどだった。時々、活動弁士のように周五郎が現れて解説をいれるところなどまるで談志の高座をみているよう。
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