539円(税込)
天才中の天才ニュートン。ニュートンの「プリンキピア」を12歳で読破した早熟の天才ハミルトン。ヒンドゥーの女神のお告げを受け、新定理を量産した神がかり的天才ラマヌジャン。天才はなぜ天才なのか。才能ゆえの栄光、が、それと同じ深さの懊悩を彼らは抱えこんでいたのではなかったか。憧れ続けた3人の天才数学者の人間としての足跡を、同業こその理解と愛情で熱く辿った評伝紀行。
まだレビューがありません。 レビューを書く
「良かった頃」の藤原正彦氏の傑作と私は思う。もっとも20年ぶりに再読したがいささか情緒的で決めつけすぎる著者の記述は鼻につくが。
ともあれ、本書はインドの天才数学者ラマヌジャンを知りたい人は真っ先に手に取ると良いと思う。ラマヌジャンが何故かわかった定理たちの凄さはやはり数学者にしかわからない。藤原さんのおかげで人類の生み出した真の天才であるラマヌジャンを知ることができたわけだが、彼を知ると知らない人生では大きな違いがあると私は信じている。ありがとう藤原正彦氏。
ちなみにニュートンのひどさとアイルランドの数学者ハミルトンの数学者的純粋性も知ることができますよ。
偉大な数学者ゆかりの地を巡りながら彼らの人生に思いを馳せる物語。メインストーリーに登場する天才数学者たちもさることながら、出自や職業に関係なく天才を天才と正当に評価して処遇した数学者たちも同様に素晴らしいと感じた。
数学史上最高レベルの栄光を手にしながらも、悲劇的な人生を送った日本人好みの世界三大数学者を、自身も数学者である著者が紹介。
この板の人にとって特に興味をひかれるのが、3人目のラマヌジャン。著者は、数学の天才と言えど、生まれ育った環境、文化の影響はあるはずと考え、3人の一生をそれぞれ現地へ飛んで取材しながらたどるが、3人ともその神への信仰が力の源泉になっていたことに気づく。
独学の天才だったラマヌジャンは、夢占いの専門家でもあった。ヒンズーの戒律を犯して渡英する決断をしたのは夢でまばゆい光を見たためだったし、夜中に起き出しては夢で見た公式をノートに書き留めていた。
ラマヌジャンは、「我々の百倍も頭がいい」という天才ではない。「なぜそんな公式を思いついたのか見当がつかない」という天才だと著者は述べる。特殊相対性理論はアインシュタインがいなくても、2年以内に誰かが発見しただろうと言われる。数学や自然科学の発見のほとんどは、ある種の論理的必然、歴史的必然がある。だから、10年か20年もすれば誰かが発見する。ラマヌジャンの公式群のほとんどは必然性が見えない。ということは、ラマヌジャンがいなかったら百年後も発見されないということである。
ラマヌジャンの独創の秘密を、著者はインドの数学者に聞くと、彼はチャンティング(詠唱)を一因として挙げた。詠唱とは、詩文などをメロディーに乗せて唱えることで、インドでは古代から数学と文学が混淆していた。例えば12世紀の数学書『リーラーヴァティ』には、次のような詩が書かれている。
ミツバチの群れが遊んでいました
その半分の平方根のハチたちは
中略
ミツバチ全部で何匹いるのでしょう
インドでは、伝統的に教科書までが詩文で書かれていた。あらゆる教科で、九九のように丸ごとリズムに乗せて覚える方式が取られてきた。子供の頃から、折に触れて得られた知識や概念をもてあそぶことが、ひらめきにつながる。イギリス支配下で屈辱的な思いをしていたインドで、ラマヌジャンはヒーローになるが、確かに彼のようなタイプこそ、インド人の心をつかむ英雄なのかもしれない。
ランキング情報がありません。
ランキング情報がありません。
電子書籍のお得なキャンペーンを期間限定で開催中。お見逃しなく!
※1時間ごとに更新
鈴木俊貴
1,683円(税込)
田中大貴
2,200円(税込)
近藤一博
1,100円(税込)
富元秀俊
3,499円(税込)
村岡大樹
1,672円(税込)