生れた街、KOOCHI市の紀行を、幼い頃の記憶の断片と重ね合せながら幻想的に綴った表題作。“亜依子”から“麻依子”へ、“麻依子”から“ミーコ”へと変貌する多重人格の女性がひき起す不可解な行動の渦を描く『亜依子たち』。一組の男女の会話を通して、作家とおぼしき女性の模糊とした像を浮びあがらせる『迷宮』。ほかに『解体』『マゾヒストM氏の肖像』など、全12編を収める。
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短編12作品を収録しています。
「宇宙人」は、著者の作品にしばしば登場する、それぞれがアンドロギュヌスの双性を担当するきょうだいが、卵から産まれた宇宙人を飼う物語です。人びとが社会生活を送っている世界のすべてを飲み尽くすような宇宙人の暗闇を介して、きょうだいの非社会的な性のかたちがえがき出されています。
「隊商宿」は、『旧約聖書』のアブラハムや、ソドムとゴモラのエピソードのパロディで、ブラック・ユーモアを利かせた物語です。
「マゾヒストM氏の肖像」は、M氏と白痴の弟の秘密に、主人公の女性が気づく物語。巻末の「解説」を担当している中井英夫は、「巧緻な、さりげない旨さを持った探偵小説の味」と評していますが、たしかにそうした観点からもおもしろく読むことのできる内容です。
表題作の「夢のなかの街」は、父親の墓参りのためにKOOCHI市にやってきた女性の物語です。唐突な場面転換をふくみつつ、現実と幻想のあわいをたゆたうような、つかみどころのないストーリーが展開されています。
この本の解説が、先日読んだ
中井英夫『ハネギウス一世の生活と意見』に収録されていたので、
そう言えば未読だったなぁ……ということで
絶版につき古本を購入。
1963~1971年に文芸誌に掲載された短編を集めたもの。
現代の人権意識その他の良識的感覚からすると
眉を顰めたくなる表現も散見され、少し呆れたが、
作者はただ、自分にとってわからないものをわからない、
おぞましいものをおぞましいと率直に述べただけなのだろう。
最も衝撃的かつ面白かったのは「マゾヒストM氏の肖像」。
谷崎潤一郎×江戸川乱歩とでも言ったらいいか、
奇妙な人物にしばし日常を掻き回される女流作家の、
それでも冷徹な慧眼が小気味よい。
中井英夫も解説で
「さりげない旨さを持った探偵小説の味」(p.373)と
評しているが、
「M氏」には実在のモデルが存在したとかしないとか?
読んでいて、二人の作家の名が頭を掠めたけれど、
作者も解説者も亡き後、真相は藪の中……かな(笑)。
図書館行ってる暇がなくて久々に引っ張り出して読んだ。
言葉の選び方、状況の作り方の絶妙なバランス。
http://takoashiattack.blog8.fc2.com/blog-entry-1270.html
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