豊かな自然に囲まれて育ったペーターは故郷を離れ、文筆家を目指すため都会生活を始める。彼はそこで多くの人と出会い、多くの事を学ぶが、心の底では常に虚しさを感じていた。文明の腐敗に失望し、故郷に戻った彼を待っていたのは、シンプルな暮らしと新たな出会いだったが……。叙情にあふれた美しい自然描写、青春の苦悩、故郷への思いを見事に描いた、著者の処女作にして出世作。
まだレビューがありません。 レビューを書く
実経験にない田舎の生活風景が脳裏に浮かぶ。
郷愁という邦題は味わい深い。
年を経てどう感じ方が変わるのかを知りたくもある。
もっともヘッセらしい作品と高い評価がある作品。27歳の時の処女作とは思えない、高い完成形を見せる。
大昔読んだ記憶では【遠きにありて故郷を思う青年の哲学的な心の揺れ】的なものと思っていた。
今回、じっくり読むと些か様を異にしていた。
山と水、そして取り分け雲を愛する筆者がカーメンチントに乗り移って故郷~スイス、アルプスに囲まれたエリアを思わせる地を基に、イタリアフィレンツェなど各地を旅する。
愛しい人を想い、想われた人をも思い、若くして水死した知人を想い、縁あって身障の男性の最期を看取って人生の旅の先はふるさとへ戻ってきた。
ペーターが口ずさむのは伊を始めとした歴史や広い精神の回想、詩歌。
父を見ながら、伯父の想いにも従う彼の時間はシンプルな生活、そして新たな出会い。
この本は、学生時代に友人から薦められたのですが、当時の私には理解できず、積読状態でした。
あれから数十年、都会で暮らすことは一度もないけれど、故郷三重県で生きてきてよかったな、と思っている今、殊に松尾芭蕉の生涯について読んだ今、ペーターの思いが心に沁みました。美しい故郷の空、山、何より美しい雲。
荒井良二さんも、「チロルくんのりんごの木」で言いたかったのではないでしょうか。「ぼくの うまれたところ」が「いちばん かがやいている」ことを。
ランキング情報がありません。
ランキング情報がありません。
電子書籍のお得なキャンペーンを期間限定で開催中。お見逃しなく!
※1時間ごとに更新
顎木 あくみ
726円(税込)
佐賀崎しげる
1,430円(税込)
トール
1,430円(税込)
棚架ユウ
1,430円(税込)
謙虚なサークル
825円(税込)