「さみしかったよね。私たち、それぞれ」生きあぐねた兄の軌跡を辿る妹の旅ーー。
恐れていたことがとうとう起こった。関空に向かうはずの飛行機に兄は乗らず、四半世紀を暮らしたウィーンで自死を選んだ。報せを受け、葬儀とさまざまな手続きのために渡墺した妹。彼女に寄り添う、兄の同僚、教会の女性たち、そして大使館の領事。居場所を探し、孤独を抱えながら生きたある生涯を鎮魂を込めて描きだす中篇小説。
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黒川創という書き手の誠実さに触れた思いがした。死者の思い出を胸に、それでも回り続ける世界の中で毅然として生き続ける生者たちの実像を実に理知的・分析的に書き記していると唸る。だが、作品に込められたメッセージ性や就職氷河期の人物の価値観のあり方などが逆説的に、小説的な旨味を出す足を引っ張っているようでどこか落ち着かない。もっと大胆に「嘘」をついて読者をかき回してもいいのではと思う反面、私小説的な素描として読むとまた違った分析が可能とも思われてもどかしい(が、その読みを試みるにはこの作品はまだなにかが足りない)
日本へのフライトを予定していた西山優介が突然ウィーンの自宅で自死し、妹の奈緒がその収拾にあたる物語だが、領事の久保寺光、カトリック教会の面々、近所の友人たちが巧みなサポートをしてくれる姿に感動した.奈緒は幼い洋を連れていたが、久保寺らが支えてくれる.兄の思い出を回想する奈緒だが、会葬者の前での挨拶は素晴らしい構成だった.杉原千畝のことも出てきたのが意外だったが、ウィーンとカウナスが地理的に近いこともあるのだろう.表紙にあるエゴン・シーレの「死と乙女」を久保寺が鑑賞し、その背景を述べている件も良かった.
自分が歴史苦手疎いので、読みづらかった。妹の視点で描かれているけれど、どうしても女性の視点とは感じられず…題材はとても興味深いのだけれど…
作者の体験に基づいているらしいので、事実の整理のような形で書かれた感が強かった。
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