日本列島に豊かな恵みをもたらす多種共存の森。その驚きの森林生態系を最新の研究成果で解説。このしくみを活かした広葉樹、針葉樹混交での林業・森づくりを提案する。
まえがき
序章 消えた巨木林─生物多様性の喪失─
憧れの巨木林
単調になった森
巨木の森を伐って何を残したのか
1部 多種共存の仕組み
1章 病原菌が創る種の多様性
ジャンゼンが見つけた森の秘密
親から離れた子どもだけが大きくなれる
どの種も同じ仕組をもつ
親木の下では多種の子どもが生き残る
種特異性という不思議
真上から降ってくる葉の病気
種子散布の進化を促す
2章 森を独占したがる種とそれを防ぐメカニズム
先駆種は純林をつくる、しかし遷移が進む
菌根菌が純林をつくる!?
ブナは森を独り占めしない─地すべりでリセット
3章 環境のバラツキが種多様性を創る
棲み分ける─ニッチ分化説
中庸を旨とする─中規模攪乱説
4章 森羅万象が創る多種共存の森
最大樹高
スーパーマンは居ない─トレードオフという自然界の掟
温度や降水量と菌類や植食者との関係
自然のメカニズムと森林施業
2部 多種共存の恵み
5章 生産力を高め、人の生活を守る
生産力を高める─草地ではあたりまえ
洪水と渇水を減らす─地上と地下の関係
水を浄化する
害虫の大発生を防ぐ─天敵の常駐
病気の蔓延を防ぐ
ナラ枯れと生物多様性
クマを山に留め置く─エサの多様性
生産が持続する─変動環境の克服
生態系機能と森林認証
6章 さまざまな広葉樹の無垢の風合い
100種を使う建具店
シオジの輪切り
嫌われ者、ニセアカシア
買い取り林産という悲劇
コナラ・クヌギの家具
雑木の魂─1千万分の1の命
7章 食と風景の恵み
森を食べる人々─鬼首の大久商店
森のグルメ本─『摘草百種』
蜂蜜の採れる森
毎日見る風景
都会にこそ広葉樹林を
鞭撻者
3部 多種共存の森を復元する
8章 針葉樹人工林を広葉樹との混交林にする
トドマツ人工林の自壊と再生
先駆者、伊勢神宮林
混交林化の技術開発が始まっている
広葉樹林に近いほど多くのタネが飛んでくる
間伐すると広葉樹林から遠くても実生が更新する
強度間伐するとなぜ種数が増えるのか─発芽を促す
経営目標を実現する間伐の強度
帯状皆伐で境界効果を活かす
馬搬
混交林化し易い地域と難しそうな地域
広葉樹を植える─精英樹・密植・パッチワーク・菌根菌
再造林は超疎植に─無駄をなくす
9章 生物多様性を基軸に据えた境目のない曖昧なゾーニング
新しい森林計画制度とゾーニング
森林・林業再生プランとゾーニング
生物多様性を基軸に
たとえ1等地でも混交林に─有用広葉樹の導入
2等地、3等地では広葉樹の混交で生産力アップ
すべての広葉樹を生産目標に
水辺林の機能を取り戻す
奥地林は巨木の森に
天然林の木材生産─生物多様性と生態系機能を高めながら
日本の山村とヨーロッパの山村─ゾーニング嫌い
10章 森と人が共生する社会
山村で暮らせるか─収入源は生物多様性に富む森
薪は裏山から
震災から立ち上がる三陸の人々
あとがき
日本列島に豊かな恵みをもたらす多種共存の森。その驚きの森林生態系を最新の研究成果で解説。このしくみを活かした広葉樹、針葉樹混交での林業・森づくりを提案する。
消えた巨木林ー生物多様性の喪失/1部 多種共存の仕組み(病原菌が創る種の多様性/森を独占したがる種とそれを防ぐメカニズム/環境のバラツキが種多様性を創る/森羅万象が創る多種共存の森)/2部 多種共存の恵み(生産力を高め、人の生活を守る/さまざまな広葉樹の無垢の風合い/食と風景の恵み)/3部 多種共存の森を復元する(針葉樹人工林を広葉樹との混交林にする/生物多様性を基軸に据えた境目のない曖昧なゾーニング/森と人が共生する社会)
清和研二(セイワケンジ)
1954年山形県櫛引村(現鶴岡市黒川)生まれ。月山山麓の川と田んぼで遊ぶ。北海道大学農学部卒業。北海道林業試験場で広葉樹の芽生えの姿に感動し、種子の散布から発芽・成長の仕組みを研究する。近年は多種共存の不思議に魅せられている。現在、東北大学大学院農学研究科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)